こんにちは、オジスキンクリニックの吉原糸美です。
「これって肝斑ですか?シミですか?」
と聞かれることがよくあります。
肝斑、という言葉は知っていてもいざ自分のお肌にある色素斑が何かわからない…という方とても多いです。
今回は肝斑と一般的なシミ(老人性色素班)の見分け方を解説します。
この記事を読んで、もう一度自分のシミを見直してみてくださいね。
どんな治療が必要になるか参考になると思います。
オジスキンクリニック浦和院 院長
目次
肝斑ってなに?
https://www1.racgp.org.au/ajgp/2021/december/melasma
以前のコラムにも記載しましたが(https://www.ozi-skin.com/melasma/)、肝斑とは比較的境界が明瞭で左右対称にできるシミのことです。
女性に多く、その中でも20代から40代にあけて一番できやすいのですが、40代を過ぎても残る方は多いです。ただし、70~80代になるにつれ、自然と薄くなっていくのが特徴です。
ホルモンバランスや慢性的な炎症が原因といわれますが、これらは実は悪化因子。
詳細はまだ不明な点も多いですが、根本の原因は皮膚の細胞自身の機能異常です。(※1)
最近は色素を取り除くだけでなく皮膚の細胞を健康にすることで肝斑が改善することもいわれていますね。
あなたのシミは肝斑?
肝斑の特徴
肝斑は頬の一番高い部分(頬骨)に沿ってできると思っている方が多いのですが、実は肝斑ができるのは頬だけではありません。
肝斑はおおよそ3種類に分けられます(※2)。
- 顔面中央型:頬、前額、口唇上部、鼻、顎タイプ
- 頬骨型:頬、鼻タイプ
- 下顎型:頬~顎限局タイプ
いずれも比較的境界がわかりやすく、左右対称にできるのが特徴です。
もちろん、額だけが限局して目立つ方もいますが、基本的には“まだ目立ってきていないだけ”と捉えるべきでしょう。
肝斑ではないシミ
左右対称にできるものをすべて肝斑だと思われている方もいらっしゃいます。
でも肝斑以外にも左右対称のシミがあるのです。
両側性太田母斑
肝斑と間違えられることが多いこちら。
肝斑よりも深いところ(真皮)に色素が蓄積しています。なんとこちらはレーザーの非常によい適応です。いわゆる肝斑に対する治療をしていても全く改善しません。
黒皮症
皮膚に対するアレルギー(接触性皮膚炎)を繰り返した結果、肝斑の好発部位に左右対称にできることが多く、区別するのがやや難しいといわれます。ただし、元はアレルギーなので茶色っぽくなる前に赤みが強かったり痒みが出ているはずです。
アレルギーの元になる原因を避けない限りは改善しません。
そばかす(雀卵斑)
2mm程度の小さな茶色いシミが両頬~鼻にできることが多いのですが、まさに肝斑の好発部位と同じですね。そばかすよりも肝斑のほうが、皮膚に滲むような色素なので見慣れると区別は容易です。そばかすもレーザーの非常によい適応ですが、肝斑に準じた治療でも薄くなっていきます。
日光黒子
おそらく皆さんが一番最初にシミと聞いて思い浮かべるのはこちら。境界明瞭なシミで大きいものは10㎜を超えます。両頬に散在して存在することも多いですが、境界がはっきりしていて、徐々に濃くなってくるのも特徴ですね。こちらもレーザー治療のよい適応です。
肝斑が合併していることも…
上記のシミは肝斑と区別して治療していくものですが、ややこしいことに
「肝斑と合併している」
場合も多々あります。
その場合の治療は肝斑の重症度や肌質をみてトータル的に判断します。
一概に「肝斑があるからレーザーは絶対ダメ!」というわけではないこともポイントですね。
まずは自分のシミが肝斑なのかシミなのかをしっかり知ってくださいね。
そのうえで、自分のシミに一番合った治療を選んでいきましょう。
肝斑は治るの?
肝斑と診断を受けた場合は、肝斑とうまく付き合っていく方法を考えてみてください。
肝斑の治療ゴールはいかに色素を目立たなくするか、そしてその目立たない状態をキープするかです。
つまり、いわゆる通常のシミのようにレーザーあてて色素を除去しておしまい、とはいきません。しかし、治療をせずに放っておくと濃くなってくることもあるのが肝斑です。
まずは出来てしまった色素を除去し、これ以上色素を作らせないように皮膚へアプローチすることが肝斑の治療の柱です。
肝斑と診断を受けたら…
まずは自宅でのスキンケアや生活を見直しましょう!
- 遮光は徹底的に。
- 肌を極力触らないように徹底する。
- メイクはできれば最小限に(メイクが濃くなることで肝斑も刺激され濃くなるといわれます)
- 内服薬を見直す(ピルの内服など)
- 睡眠を確保する
といったことが大切になります。
詳しくは以前のコラムをご覧ください。
肝斑には内服が必須
できることであれば内服薬から開始しましょう。
内服や外用剤は基本的にこれ以上色素を作らせないよう働きかけてくれます。(※3)
成分としては、トラネキサム酸やグルタチオン、ビタミンC、ビタミンEなどは肝斑への効果が実証されています。
肝斑の治療は難渋することもある中で、効果があるとわかっているものを使わない手はありません。そして、色素を作るスピードが比較的落ち着いている肝斑であれば内服だけでも効果を感じることができますよ。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
肝斑なのか、そばかすなのか、アザなのか…シミの種類によって治療は全く変わります。
顔のシミにお悩みの方はぜひ一度お気軽にお問合せくださいね。
参考文献
※1 Guinot C, Cheffai S, Latreille J, Dhaoui MA, Youssef S, Jaber K, et al. Aggravating factors for melasma: a prospective study in 197 Tunisian patients. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2010;24:1060–1069.
※2 Differential diagnosis of melasma and hyperpigmentation https://doi.org/10.1002/der2.144
※3 Melasma: treatment strategy J Cosmet Laser Ther. 2011 Dec;13(6):265-79. doi: 10.3109/14764172.2011.630088.