こんにちは。OZI SKIN CLINIC浦和院長の吉原です。
さて、皆様からよく「ヒアルロン酸とボトックスは何が違うのか?」とお尋ねいただきます。
ヒアルロン酸とボトックスの違いを一言で言うと
「無表情でも残るシワの治療にはヒアルロン酸」
「表情をつくると出るシワの治療にはボトックス」
を使えば良いです。
ほうれい線やマリオネットライン(あやつり人形のような口両脇から顎にのびる2本のしわ)のように年齢とともに出てくるシワやたるみの原因は
①土台となる骨が減ってくる
②脂肪が重力で落ちてくる
ことです。ヒアルロン酸には骨の代わりになる硬いものから、脂肪に近い柔らかいものまで幅広い種類があります。
症状に合わせてヒアルロン酸を上手に使い分けることで、たるみを戻していくことができます。
一方、おでこの横じわなど表情をつくったときにできるシワ(表情じわ)の場合、これはたるみではなく、筋肉の過剰な動きに皮膚が追いつかないことが原因とされています。
そこで筋肉の動きをゆるめる働きを持つボトックスを使った治療を行い、筋肉の動きと皮膚の動きのバランスを整えることで表情ジワを治療することができます。
しかし、知識と経験の少ないドクターに治療を任せてしまうと、ヒアルロン酸治療・ボトックス治療どちらも思わぬ失敗を経験する可能性が少なくありません。
特にボトックスは一歩間違えると予期せぬ副作用が出ることがあります。
そのような失敗をしないためにも、ヒアルロン酸とボトックスについて詳しく解説していきます。
執筆者:吉原 糸美
オジスキンクリニック浦和院 院長
目次
体内で潤滑油として働くのが
ヒアルロン酸
私たちの皮膚には
・外側(表皮といいます)
・内側(真皮といいます)
があります。皮膚の若々しさを保つための成分として有名な「コラーゲン」は皮膚の内側(真皮)に存在しています。コラーゲンは弾力性が強く、お肌の土台となる成分です。そのコラーゲンの隙間を埋めるように存在して、コラーゲンの弾力性をサポートしている物質が「ヒアルロン酸」です(*1)。
ヒアルロン酸自身が強い弾性や粘り気を持った物質で、
・皮膚
・軟骨
・筋肉
といった体の色々な部位に存在しています(*2)。
ヒアルロン酸は保湿性に優れており、お肌の潤いをキープするためには欠かせない物質です。
ヒアルロン酸は自身の600倍の水分を蓄える力があるとされています!驚きですよね。乾燥している状況下でも、ヒアルロン酸は水分をキープし続けると言われています。保湿性に優れているヒアルロン酸(*3)は、
私たちの体の中で
・水分の維持
・クッション
の役割を果たしています。
ヒアルロン酸は関節や目にとっても
大切な成分
ヒアルロン酸は水分の保持に優れた物質です。その性質を活かして関節の軟骨に多く含まれています。クッションの働きを持つヒアルロン酸によって、骨と骨の間の滑りがよりスムーズになります。
ヒアルロン酸は目にも多く含まれています。ヒアルロン酸の保湿力は目の形をキープすることにも役立っているのです。
シワやたるみはヒアルロン酸の
減少が原因
年齢を重ねるにつれてシワ・たるみが気になってくる方は少なくないでしょう。
私自身もシワ・たるみと日々戦っております(笑)。
わたしたちを悩ませるシワ・たるみは、実はヒアルロン酸の減少が原因とされています。
10代や20代の間は私たちの体も若いので、ヒアルロン酸がたくさん作られています。
ところが、加齢の影響で細胞の働きが低下してくると、私たちの体でヒアルロン酸が作られにくくなるのです。ヒアルロン酸は保湿性に優れており、お肌の潤いをキープするためには欠かせない物質であることを先ほどご説明いたしました。
その大切なヒアルロン酸が減少していくことで、私たちのお肌は潤いをキープできなくなっていくのです。その結果として潤いを失った私たちの皮膚は、内側(真皮)がスカスカになってしまい、外側(表皮)をがっちりと支えられなくなります。これが、私たちの皮膚のシワ・たるみとして表れてきます。
ヒアルロン酸のサプリを飲んでも問題は解決しない
「歳をとるにつれてヒアルロン酸が作られにくくなるなら、サプリメントで補おう!」とお考えになる方も少なくないでしょう。サプリメントでヒアルロン酸を摂取することの効果はゼロとは言い切れませんが、即効性は期待できないでしょう。
ヒアルロン酸をサプリメントで飲んでも、体の中で分解されてしまうためです。
摂取したヒアルロン酸が分解されて、もう一度体の中でヒアルロン酸に組み立てられる可能性も否定できませんが、直接的な効果を期待することは難しいでしょう。
気になるシワやたるみには
ヒアルロン酸注射が効果的
ヒアルロン酸を
・しわ
・たるみ
が気になる部分へ注射する治療が「ヒアルロン酸注射」です。
ヒアルロン酸を直接皮膚の下へ注射することでお肌のシワやたるみを直接治療することができます。注射する場所によって、必要な施術時間や注射方法が異なるため、医師との十分な相談が重要です。ヒアルロン酸注射の場合は、治療が短時間で終了します。このため、注射後のダウンタイム(注射してから日常生活に戻るまでの期間)が非常に短いことがヒアルロン酸注射の大きな特徴です。
「ほうれい線」や「マリオネットライン」にはヒアルロン酸注射がおすすめ
ほうれい線やマリオネットラインにように年齢とともに出てくるしわ=たるみには原因が大きく2つあります。
①土台となる骨が減ってくる
②脂肪が重力で落ちてくる
土台がくずれ、さらに重力で脂肪が落ちてくるために年齢とともに深くなっていきます。
ヒアルロン酸には骨の代わりを果たせるような硬いものもあれば、脂肪のような柔らかいものもあります。症状によってうまくヒアルロン酸を使い分けることで土台からたるみを戻していくことができます。
「毒をもって毒を制する」のがボトックス
ヒアルロン酸に対して、ボトックスはボツリヌス菌(食中毒に関わる菌)によって作られるタンパク質をベースにしたものです(*4)。美容皮膚科において、ボトックスは眉間・目尻のシワ取りに広く利用されています。ボツリヌス菌によって作り出されるタンパク質(ボツリヌストキシン)は、私たちの神経に作用して、筋肉の緊張やつっぱりを和らげる働きを持っています。
ボツリヌス菌によって作り出されるタンパク質を上手に利用することで、薬として利用できるようにしています。
ボトックスは美容皮膚科以外でも広く使われている治療です。例えば、運動機能にダメージを受けた場合にもボトックスを利用することがあります。脳卒中などで神経に障害が残った場合、
・意図していないのに筋肉がつっぱる
・着替えに時間がかかる
・足がねじれて歩きにくい
・筋肉が痛い
といった症状に悩まされることがあります。このような状況になった場合、日常生活を改善するためにボトックス注射が利用されることがあります。
「おでこの横じわ」や「目尻のしわ」には
ボトックスがおすすめ
おでこの横じわなど表情をつくったときにできるしわを「表情じわ」といいます。
これはたるみではなく、筋肉の過剰な動きに皮膚が追いつかないことが原因。
ボトックスには筋肉の動きをゆるめる働きがあり、筋肉の動きと皮膚の動きのバランスを整えることができます。
ボトックス治療で失敗しないためには
信頼できる医師を選ぶことが大切
ボトックスを一度行った部位を後から修正することは非常に難しいです。万一ボトックスを正しくない場所に打ったり、量を多く使いすぎたりすると、逆に不自然な表情になったり日常生活がより不便になったりしてしまいます。
ボトックス治療で失敗しないためには信頼できる医師を選ぶことが大切です。
ボトックスを打つ際には大切なことが2つあります。
①適切な筋肉へ注射をする。
皮膚表面からは筋肉は見れませんので、解剖学の知識は必須です。
骨の近くなのか、皮膚のすぐ下なのか…注射を入れる深さによっても効かせる筋肉が容易に変わってきます。
もちろん骨の大きさにもよって筋肉の大きさも変わりますので、眉毛から〇cm離す…などのマニュアルは通用しません。
②ボトックスの適切な量を見極める
ボトックスは筋肉の動きや厚みをみながら適切な量を打っていきます。
経験も大切で、おおよそ必要な量を見極めることができるようになってきますが、ボトックスの効きには個人差があるのも事実。デフォルトで量を決められないんです。
患者様1人1人に合った適切な量を見極めるためにオジスキンクリニックでは「リタッチ制度」を設けています。万が一ボトックスの効きに左右差が出たり、しわが部分的にまだ気になるような場合にコストフリーでリタッチを行っています。このリタッチ制度によって、その方に合ったボトックス量が把握できますので次回からの注入量の参考にもなるのです。
ボトックス治療に失敗した場合
万が一、ボトックスに失敗するとどのような症状が出るのでしょうか。
額のボトックス:まぶたが重くなり、怖い顔つきになる
眉間のボトックス:眉尻があがり、逆ハの字の眉毛になる(スポックブロウ)、眼瞼挙筋というまぶたの筋肉に効かせてしまうと目があけにくくなる
口角ボトックス:片側だけ笑いにくくなる
エラボトックス:片側だけ笑いにくくなる
などなど…
どれも嫌ですよね。
ボトックスは表情しわには最高の治療ですが、一歩間違えると予期せぬ副作用が出ることがあります。
ボトックス注射を行うと数日後に
効果が現れ始める
ボトックス注射の場合、注射後数日経過してから効果が現れることが多いとされています(*5)。
残念ながら、ボトックス治療当日には効果はほぼ現れないとお考えください。ボトックス治療は効果が現れてから数ヶ月程度効果が持続し(*5)、その後徐々に効果が切れ始めることが多いようです。
ボトックスをやめると治療前の状態に
戻りやすい
ボトックス治療の効果は半永久的には続きません。ボトックス治療を定期的に継続いただくことで、ボトックス治療の効果を維持することが可能となります。
ボトックスは筋肉量にもよりますがおよそ4~6か月程度効果が持続します。
また、部位によっては何回かボトックスを継続することでしわを寄せるくせがなくなり、ボトックス不要になることもあります。また、効果を長続きさせるために「これくらいしわが出るようになったら2回目の治療をしましょう」とご提案することもあります。
患者様お一人お一人の状態に合わせてボトックス治療の間隔を決めることが重要です。必ず信頼できる医師との相談の上、ボトックス治療のスケジュールを設定するようにしてください。
まとめ
・体内で潤滑油として働くのがヒアルロン酸
・シワやたるみはヒアルロン酸の減少が原因
・気になるシワやたるみにはヒアルロン酸注射が効果的
・「おでこの横じわ」や「目尻のしわ」にはボトックスが
おすすめ
・ボトックス治療で失敗しないためには信頼できる医師を
選ぶことが大切
参考文献
*1
Sudha PN, Rose MH. Beneficial effects of hyaluronic acid. Adv Food Nutr Res. 2014;72:137-176. doi: 10.1016/B978-0-12-800269-8.00009-9.
*2
Salwowska NM, Bebenek KA, Żądło DA, Wcisło-Dziadecka DL. Physiochemical properties and application of hyaluronic acid: a systematic review. J Cosmet Dermatol. 2016 Dec;15(4):520-526. doi: 10.1111/jocd.12237.
*3
Keen MA. Hyaluronic Acid in Dermatology. Skinmed. 2017 Dec 1;15(6):441-448. PMID: 29282181.
*4
Khawaja HA, Hernandez-Perez E. Botox in dermatology. Int J Dermatol. 2001 May;40(5):311-7. doi: 10.1046/j.1365-4362.2001.01176.x. PMID: 11554992.
*5
Lorenc ZP, Kenkel JM, Fagien S, Hirmand H, Nestor MS, Sclafani AP, Sykes JM, Waldorf HA. A review of onabotulinumtoxinA (Botox). Aesthet Surg J. 2013 Mar;33(1 Suppl):9S-12S. doi: 10.1177/1090820X12474629. PMID: 23515199.